正義は勝つ!~後編~
前回『正義は勝つ!~前編~』の続編です。
まだお読みでない方は、こちらを先にお読みください。
考え続けたHに、うっすらと光がさしました。
『番長が卒業すると、次の番長は、右腕や左腕がなる。それなら、自分が最後の番長になればいいんだ!』
それからのHは、いじめに耐えながらも、A番長を“笑わせるように”おちゃらけてみせたり、A番長が気弱になっている時には“慰め、話を聞く”のでした...。
A番長は、孤独でした。
恐怖から自分のいうことを聞く人間しか、周りにいないからです。
『だれからも、本当の友情を感じない。Hは自分を楽しませ、笑わせようとしてくれる。話を聞いてくれる』
そうして、Hへのいじめは徐々に減っていきました。
気をよくしたA番長は、「次の番長はHだな」と言い残し、卒業していきました。
ついに、小学生のH番長が誕生したのです!
さて、H番長がおこなったのは...?
争いが起こりそうなときに、“仕掛けた人間をひと睨み”。
いじめは、しません。
いじめによる恐怖が意識下に残っている寮生たちには、“にらみ”だけで十分なのです。
あるときは、双方の話を聞き、第三者として冷静に、平和な解決へと導きました。
A番長の元手下や、いじめの標的にならないようにとすり寄ってくる人たちには、みんな平等に接するようにしました。
右腕、左腕といわれる人をつくらないように。
そんな中、元友人Fは、Hが近くを通るだけでビクビクしていました。
Fが恐怖からいじめる側を選んだことを、Hは知っていました。
ただ、このビクビクが続くのは、Fの精神上よくないので、Fが自らしたことを認めて、Hに謝罪し、「許す」とHが伝えることで、『恐怖からFを救おう』と、Hは考えました。
H「以前、わたしをいじめたことをどう思っている?」
Fに問いかけました。
Fはビクビクしたままで、どんな問いかけにも無言のまま、答えません。
困ったHは、『もう、自分の身を守るために友達を傷つけるようなことは、しないでほしい』と、願いを込めながら、強くなりすぎず、弱くなりすぎない力で、Fの頬を叩きました。
H「これで、“おあいこ”にしよう」
泣いているFを背に、Hはその場を去っていきました。
とてもイヤな感触がHの手に残りました。
それは、手の痛みではなく、心の痛みでした。
『もっと他に、いい方法がなかったんだろうか』と、後悔し、『もう二度とひとに手をあげることはしたくない。しない』と、Hは心に誓うのでした。
ある日のことです。
寮母がHに向かって、吐き捨てるように言いました。
寮母「H番長さんをみんな怖がってるよ。お~、こわ!」
かつて、Hに優しかった寮母は、もういませんでした。
Hは、自分の本心が届かないことをさみしく思いましたが、無言を通しました。この寮からいじめをなくすことが、Hの目的だったからです。
Hが恐れられる存在でいることで、未来にいじめられる人がいなくなる、と信じていたのです。
“やさしいひと”にならないよう気を付けながら、いじめをせず、人々に平等な番長をつとめました。
ようやくHが寮を去る日がやってきました。
残る寮生たちは、ほっとしました。
小学生のHもまた、すがすがしい気持ちでいっぱいでした。
なぜなら、次に番長となる者は、もういないのです。
そして、こわがられる番長を、もう演ずる必要がないのです。
『寮生活、相当大変だったけど、自分が思いつくことは、全てやった』
『きっと、もういじめはおこらないだろう』
数ヶ月後。
Hが寮をたずねると...。
そこにはいじめもなく、穏やかに過ごす寮生たちが暮らしておりましたとさ。
めでたしめでたし。
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、実話を基にした物語です。
あなたは、いま、この中の登場人物を演じていますか?
あなたは、この物語のどの登場人物を演じたいですか?
あなたの中にも、“正義の炎”はあるのです。
どうぞ、気づいてあげてください。
灯してあげてください。
魂と呼ばれる、本来のあなた自身は力強く、良心・愛に満ちています。
あたたかな良心・愛に沿った行動ができますように...