正義は勝つ!~番外編その1~
前回の記事『正義は勝つ!~前編~』『正義は勝つ!~後編~』の番外編です。
番外編だけでも、単独でお読みいただけると思いますが、ご興味がございましたら、読んでみてください。
いじめられっ子の小学生Hが、いじめられなくなった、ある日のことです。
中学生のA番長が、寮にかかわる仕事をしている大人Jを、からかい始めました。中学生の右腕Bは、笑いながらはやし立て、Aをあおって共に大人Jをからかい始めます。
寮生活でのストレス解消である“いじめ”をしなくなったA番長にストレスがたまったのか、はたまた、A番長という存在を大人Jに認めてほしかったのか...。
本当の理由がHには分かりませんでしたが、いずれにせよ『A番長は、大人Jにかまってほしいんだなぁ』と、遠巻きに見ていました。
大人Jは、からかわれても相手にせず、A番長はどんどん逆上していきました。
挙句の果てに...。
A番長「なんだよ!いなくなればいいって思ってんだろ?!お望み通りにしてやるよ!後悔すんなよ!お前のせいでSi(し)ぬんだ!Siんでやる!!」
去っていく大人Jの背中に叫んでいました。
A番長と右腕Bは「あいつ、マジでムカつく!!」と、激怒したまま外への扉を開きました。
扉を開けたとき、A番長が振り返り、Hに声をかけました。「Hは、行かないのか?」と。
Hは「...一緒に行くよ」と、答えました。
『この二人のことだから、本当に命を絶つとは思えない。だけど、万が一の場合もあるし、寮は山の上。夜中の山道は危険だし、二人を無事に寮にかえさなければ』
Hは考えます。
『年下なうえに、元々いじめていた人間が説得したところで、A番長は応じないだろう』
『学生寮の近くに、寮にかかわる大人たちの寮がある。二人が気に入っている大人Lに説得してもらおう。たとえ説得できなかったとしても、子供が夜中に寮を出たことが、大人に伝わる』
H「A番長、亡くなる前に大人Lに伝えた方がいいんじゃないかな。きっと二人が突然命を絶ったら、悲しむと思うよ」
Hの思惑通りにことは運び、三人は、大人Lを訪ねることになりました。
大人L「こんな夜中にどうしたの?!とにかく、寒いから中に入って」
Lは、子供たちを部屋に招き入れました。
落ち着いてもらうために、あたたかい飲み物を子供三人にわたし、話を聞きます。
『逆上している子供たちを叱るのではなく、思いを吐き出させて、なだめよう』
大人Lは、そう考えました。
大人LとHの願いもむなしく、A番長と右腕Bは「命を絶つ前にあいさつに寄っただけだから。じゃ!」と、部屋をでます。
Hは二人に気付かれないよう、大人Lに目配せをしました。
心の中で『二人をかならず無事にかえします!ありがとう』と思いながら...。
A番長「場所を探そう。でも、暗い山道は歩きにくいから、道路に出よう」
H「道路は人目につくよ。小中学生が夜中に歩いてたら、補導されるよ」
足元の悪い山道を歩かせることで二人を疲れさせ、怒りと命を絶つことから離れさせる作戦をHはすでに思いついていたのでした。
しばらくすると、Hの思惑通りに二人は「お腹がすいた」「風呂に入りたい」「つかれた」と、言うようになりました。
『もうそろそろ、いいかな』と、Hは内心思い、二人を人目につく場所へと誘導しました。
山のふもとまで下りて来て、明るい道路が見えたとき。
A番長「家のあたたかい風呂に入りたいな。命を絶つ前に、親に先立つことを伝えたかったな」
H「!!!」
『まだ命を絶つことから離れていない?!早すぎた。ダメだ、まだダメだ。いま寮に戻したら、同じことを繰り返すだろう。二人には、懲りてもらわなければいけない。もう命を絶とうとするのも、寮を飛び出すのもコリゴリだと思わせなければ...』
H「A番長の家まで歩いていこう。後悔しないように、親に先立つことを伝えにいこう」
A番長「疲れたから、タクシーがいいな」
H「こんな夜中に薄着の小中学生だよ?乗せてくれるかな?怪しまれるよ」
話をしているうちに、三人の体はだんだんと夜の山に冷やされていくのでした...。
~つづく~
『正義は勝つ!~番外編その2~』はこちら。