夏雨の思い出
ほんの少しの勇気が、だれかの心を癒すかもしれません。
全国の梅雨明けも、そろそろですかね。
梅雨が明けた夏には、ザっと短時間で振る強雨が頻繁におこります。
あぁ、なんど、外に干した洗濯物を濡らされたことか...。
そんな困った雨ですが、わたしの心をあたたかくしてくれる思い出があるのです。
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ある夏の日。
電車の乗り換えをしようと改札口を出たところ、激しい雨が降っていました。
他線へ乗り換えるには、2~3分ほどの距離。屋根がありません。
「走っても、この雨じゃズブ濡れだろうなぁ...」
次の予定まで、少し時間にゆとりがあったため、雨が小降りになるのを待つことにしました。
ところが、なかなか小降りにならない雨にヤキモキしながら、空を見上げておりました。
「よかったら、どうぞ」
へ?突然かけられた声に驚きました。
隣に立ったおばさまが傘を広げながら、さらに続けます。
「あちらの改札までなら、ご一緒できますから。どうぞ」
傘を見ると、ひとり用の小さな傘。
「あ、傘はちいさいけど短い距離だし、傘がないよりはマシでしょう?一緒に濡れましょう」
...私を入れたら、おばさまもズブ濡れ。
心中を察したのか、おばさまが強めにススメてくださいました。
「...いいから、入ってちょうだい!」
じぶんに向けて、差し出された傘。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」
歩き始めると、おばさまが思い切ったように話し始めました。
おばさま「あのね、変なことを言ってしまうけれど...。じつは私、普段ひとに傘を差しだすなんてしないの。知らない人に声をかけるのも、ね」
ひかる「え?そうなんですか?それなのに勇気を出してお声をかけてくださって、ありがとうございます」
おばさま「じぶんでも不思議なの。何故だかわからないんだけど、“この人は、傘に入れて差し上げなくっちゃ!”って、強い想いが湧いたの。だから、どうしても入ってほしかったの。あなたが傘に入ってくれて良かったわ」
ひかる「ほんと、ふしぎですねぇ!でも、私はその想いのおかげで助かりました。ありがとうございます」
目的地まで数分の距離、短い会話。
到着した二人は、笑顔でわかれたのでした。
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あれから数十年。
今でも、この時期に当時を思い出しては、「ありがたいなぁ」と感じています。
勇気をだして助けてくださったことに、感謝とうれしさが湧くのです。
この世にじぶんを助けてくださる存在がいることに、こころが温まるのです。
あなたの、ほんのちょっとの勇気が、誰かの心を何十年も癒すかもしれません。
あなたが相手の想いを受け入れることで、相手の心を癒すかもしれません。
ひとの親切な行動を見ていた、誰かの心が癒されるかもしれません。
あなたも、夏雨の良い思い出、つくりませんか?